No.52←Mt-09 つしまる(初代)

とらやまの森No.12より転載
ショック! ツシマヤマネコ2例目のFIV(ネコ免疫不全ウィルス)感染
 
昨年末12月20日に上県町佐護の鶏小屋にて保護されたMt‐09の検査結果が出そろいました。結果はFCoV抗体価は陰性でしたが残念な事にFIV陽性でした。
 FIVウィルスに感染しても、すぐにエイズの症状が出るわけではありません。数年かそれ以上の「無症状キャリア期」ののち、発病の初期段階には、慢性の口内炎、鼻かぜ症状、皮膚病、下痢、発熱などがみられます。エイズ期(発病)になると、これらの症状が重く、全身状態が悪くなり、死亡することがあります。

 獣医さんの診察の結果、現在Mt‐09に発病の兆候はなく、展示室モニターで公開中の個体(96-002)と同じ、「無症状キャリア期」の状態にあると考えられます。FIVに感染しても、ストレスの少ない生活をさせて発病を遅らせたり、また、発病してしまっても、薬を使ってなるべく楽な生活を送らせることはできます。

対馬野生生物保護センターのHPから転載
2000年12月20日朝、上県郡上県町佐護友谷(さごともや)の民家で鶏小屋のニワトリをノラネコから守るために仕掛けられた箱ワナでツシマヤマネコが捕獲されているのが発見され、同日8:00に当センターに保護収容されました。このMt‐09と名付けられたヤマネコはオスの成獣で、全長は約82cm、体重は約3.8kg。
 住民の方の話では、現場はノラネコの多い地域で、3日前から連夜ニワトリを捕られていたとのことです。これらももしかするとMt‐09の仕業だったのかも知れません。

 センターではツシマヤマネコを捕獲したり死体を収容したりした場合は、個体の健全性を把握するために専門の検査機関に血液を送って健康状態やウィルス感染について検査してもらっています。Mt‐09は検査の結果、猫コロナウィルス類(FCoV)の抗体価が少し高いことが判明しました。FCoVに感染した場合、ウィルスの種類によっては猫伝染性腹膜炎(FIP)という致死率の高い病気を引き起こす可能性があります。また感染個体に直接接触しなくてもフン尿を介して間接的に感染することがあるため、フンや尿をマーキングに使うことのあるヤマネコにとっては、非常に怖ろしい病気であるといえます。FCoVに感染した可能性のあるツシマヤマネコの確認例は、人工繁殖のために1996年12月に上対馬町で捕獲されたオス(この個体はイエネコ由来の猫免疫不全ウィルスにも感染しており、現在センターで隔離飼育中。展示室モニターで観察できます。)に次いで2例目です。

 Mt‐09は今のところFIPに特徴的な症状はみられず、またFCoV感染についてはまだ確定的ではないため再検査が必要ですが、この個体は他の猫特有のウィルスにも感染している可能性があります。これらのウィルス感染がツシマヤマネコ野生個体群に拡がった場合には、種の絶滅の引き金となる可能性があることから、再検査による確定的な結果が得られるまではセンターの検疫隔離飼育施設で隔離飼育することになりました。

 Mt‐09が生活していたと考えられる生息地には、ノラネコはもちろんツシマヤマネコでもこれらのウィルスに感染している個体が生息している可能性があります。対馬野生生物保護センターでは緊急にこれらの感染状況を把握するとともに、ノラネコ(イエネコ)由来のウィルスがツシマヤマネコに感染拡散することを防ぐ具体的な手だてについて皆さんとともに考えていきたいと思っています。

来館者を対象に募集していた公開中のツシマヤマネコの名前が「つしまる」に決まりました。
「つしまる」は応募総数1480票のうち14名の方からご応募いただき、対馬らしい動物の名前という理由で決まりました。これをきっかけに、ツシマヤマネコに対して親しみを持って頂ければ幸いです。皆さんも「つしまる」に会いにきてください!沢山のご応募ありがとうございました。(とらやまの森No.24から転載)

「つしまる」プロフィール
性別:オス 年齢:不明(推定9歳以上) 体重:約3.5kg 全長:82cm 尾長:28cm
2000年12月20日、上県町友谷で保護され、FIV(通称ネコエイズ)に感染していることがわかり、その後センターで飼育をしてきました。

死亡までの経過
2003年12月9日からセンターで一般公開していたツシマヤマネコの「つしまる」が、2007年6月4日に残念ながら死亡しました。「つしまる」は今年の1月末から食欲不振や腰のふらつきなどの症状が見られ、一般公開を休止し、センター内の別の施設で治療をしていました。

「つしまる」がこのような状態になった原因は分かりませんが、どこからか飛び降りた拍子に腰を痛めたのかも知れません。老齢になると、このようなことが起きることがあります。その後、体調は回復傾向にありましたが、老齢であることも考慮して一般公開を引退することになりました。

 引退後は、体調がよくなったり、悪くなったりを繰り返していましたが、5月の半ばころから徐々に体調が悪化。食欲不振が続き、治療の甲斐なく、6月4日の夜に眠りながら息を引き取りました。死亡した原因については、現在東京大学に依頼し究明中です。FIV(通称ネコエイズ)が発症していたかについても検査を行う予定です。

「つしまる」が残したもの
世界で初めて、生息地対馬で一般公開されたツシマヤマネコが「つしまる」です。対馬の島民でさえ、実際にツシマヤマネコを見たことがあるという人が少ないという現状の中で、「つしまる」は約3年半という長い間、「ツシマヤマネコはこんな動物なんだ!」という感動と、ツシマヤマネコがおかれている厳しい現状をたくさんの人に伝えてくれました。
 今、大きな勤めを終え安らかに眠りについた「つしまる」ですが、ツシマヤマネコ保護に大きく貢献してくれたことに感謝しています。(とらやまの森No.37から転載)

Share:

Author: ねこりん