No.2←96-002 ♂

1996年12月5日上対馬町舟志で繁殖用に捕獲されたが、エイズ・コロナウイルスのキャリアだということが判明した。当時はセンターもなく、動物園での飼育もできなかったため、鹿児島大学に送られた。その後センターが開設されたため1998年10月9日にセンターへ移動。1999年3月26日からモニターカメラによる公開を開始した。2001年後半から消化器系の様々な疾患がおこり、体重が減少。2002年7月前半より採食量が極端に減少したため、強制給餌を行う。8/20にはほとんど受けつけなくなり、2002年9月14日に死亡した。死亡時の体重は2,000gであった。4月の検査では白内障が確認されたものの、FIVでの発病の兆候が見られなかったため、老衰での死亡と考えられる。推定年齢は8歳以上。(画像:とらやまの森3号より転載)

対馬野生生物保護センターのHPから転載(一部編集)
1998年10月9日の午後、ツシマヤマネコの飼育個体が1頭ここ対馬野生生物保護センターに移送されてきました。これは環境庁のツシマヤマネコ保護増殖事業で計画されている飼育下繁殖のために1996年12月に捕獲されたオスの個体です。
捕獲後福岡市動物園でいろいろな健康診断を受けた結果、猫免疫不全症ウィルス(FIV)と伝染性腹膜炎を起こす可能性のある猫コロナウィルス(FCoV)の2種の感染性ウィルスの保菌個体(キャリア)であることがわかったため、飼育下繁殖に使うことはあきらめて急きょ専門の獣医師がいる鹿児島大学獣医学科に入院していたものです。
 これらのウィルスはイエネコからヤマネコにうつされたものと考えられていますが、環境庁では今後も同様の感染個体が見つかる可能性を案じて、病理検査をしたり感染を防ぎつつ飼育したりするための「検疫・隔離飼育舎」を対馬野生生物保護センターに整備しました。このほどヤマネコの隔離飼育の準備が整い、鹿児島大学で飼育されていたオスもキャリアではありますが発症もせずに元気なため、空路ふるさと対馬に帰ってくることになったのです。
何百kmもの旅の疲れか、あるいは野生獣の用心深さか、センターの隔離飼育舎に収容された直後は移送用の箱からなかなか出て来ようとしませんでしたが、翌日からは新しい飼育ケージの中で元気に活動している様子がモニターカメラで観察されています。センターでは現在飼育個体の公開はしていませんが、個体の健康状態の様子を見ながらモ二ターによる公開を計画中です。
 このオスの捕獲以降のべ10頭以上のツシマヤマネコの病理検査をしていますが、幸いこれまでのところ同様のウィルスに感染した個体は見つかっていません。この個体が感染してしまった種類のウィルスはイエネコでは普通にみられるものですが、うつされたら現在のところ有効な治療法はないといわれています。従ってツシマヤマネコと接触する可能性があるようなイエネコの放置は、ヤマネコの絶滅の引き金にもなりかねません。ヤマネコのためにも不要な猫は山に捨てずに町役場に引き取ってもらうなど、特に対馬ではイエネコの飼い方に気をつけたいものです。

 さて、いつものようにヤツの世話をしに行くとしよう。昨夕は通常メニューに加えて鶏レバーも60g程やっておいたから今日はごきげんだろう。まずはモニターカメラでの作業録画を確認し、作業チェックシートを用意して、いざ隔離飼育舎へ。おーっとその前によ~く手を洗わなくては。消毒済みの飼育舎内に汚染を持ち込んでしまったら大変だ。隔離飼育舎に入ったら飼育室の手前で殺菌済みの作業用手術着に着替え、長靴を履いて消毒液のプールに足を浸す。飼育室内ではまず分厚いゴム手袋をしてから作業にとりかかる。これらもみんな室内と外界との隔離を徹底するためのルールなのだ。
「今日も元気にしているか?」とケージの中をのぞき込む。すると、フーッ、フーッ、カッ、と牙をむいて怒り出す。ウィルスに感染しているとはいえ、やっぱり野生動物だ。毎日見ててもたくましさにホレボレする。掃除してやるからちょっとこっちの部屋に入っていてくれ。よしよしエサはほとんど全部食ってるな。水も170ml飲んでいる。フンは全部で110g、状態も良好だ。おっと焼き捨てるまでフンはひとかけらも落とさないようにしなければ。

飼育ケージの消毒。これが一番やっかいだ。汚れは全てこそげ落とした上で消毒薬をスプレーし、ピカピカになるまで拭き取りを繰り返す。床・壁・天井、全部完全に消毒する。しかも作業着が汚染されないように気をつけないといけない。最も気を使うのは、使用後の拭き取り紙やフンなどの汚物の処埋だ。厳重にくるんでバーナーで灰にするまで気を抜けない。ふう。
 水入れに新鮮な水300mlを入れて、ケージを施錠。飼育室に入る時とは逆に手袋の消毒、長靴の消毒、作業着の消毒を済ませて隔離飼育舎を出る。もちろん手もよく洗う。作業終了は09:49だ。
 あとは昨日24時間録画しておいたビデオテープを起こして行動分析をしておく。これを見ると、夜中から明け方に盛んに活動しているのがわかる。タ方17:00頃にはもう1度隔離飼育舎に入って今度は清掃消毒とエサやりだ。消毒作業は結構骨の折れる仕事だが、ここはツシマヤマネコの重要な生息地の中なので、病原ウィルスを外に漏らすことは絶対に許されない。こんな狭いところで隔離飼育しなければならないようなヤマネコはコイツが最後であって欲しいと願うばかりである。

対馬野生生物保護センターのHPから転載
隔離飼育中のツシマヤマネコの死亡について
投稿者:センター 投稿日:2002/09/17(Tue) 19:38
 
猫免疫不全ウィルス(FIV)に感染しているため、対馬野生生物保護センターで隔離飼育していたツシマヤマネコの2頭のうち1頭が、14日16時48分に死亡しました。死因は調査中ですが、FIVによる発病は認められず、老齢であることから老衰と推察されます。

<詳細>
 この個体は、1996年に福岡市動物園での人工繁殖用に捕獲したもので、捕獲後、猫免疫不全ウィルス(FIV)に感染していることがわかったため、隔離して飼育していたもの。
 昨年後半から消化器系の様々な疾患(長期の下痢、長期の便秘など)がおこり、体重が徐々に減少した。今年の7月前半より、採食量が極端に減少したため強制給餌を行っていたものの、8月20日前後からそれもほとんど受け付けなくなり、14日16時48分に死亡した。死亡時の体重は2000gであった。年齢は不明であるが、捕獲時に成獣だったことから、少なくとも8歳は超えていると考えられる。
 今年4月の検査によると、FIVによる発病の兆候(リンパ節の腫れ、口内炎など)は認められず、代わって、白内障などの老齢性の機能低下と思われる症状が見られており、死亡は老衰によるものと考えられる。
 死体は、14日深夜、センターにおいて解剖したが、死因等については臓器を鹿児島大学に送付して専門家の意見を聞くことにしている。なお、精巣は神戸大学に送付した。

(参考)個体の情報
 1996年12月5日 人工繁殖用に捕獲、福岡市動物園へ移送
 1996年12月12日 FIVに感染していることが判明したため、鹿児島大学に移送し検査
 1998年10月9日 対馬野生生物保護センターに移送し隔離飼育
 2002年9月14日 死亡

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Author: ねこりん